Optimal Depletion of Oil [NHH]

まぁテストも終わって実家でぐだぐだしてるんですが、勉強した事を忘れない様にちょっと思い出し記事を。

石油の生産が一体どのような段階を踏んで行くか?というお話。


石油生産には大まかに3つのステージがある。

optimal depletion.JPG

1.初期
この時期は石油会社がプラントの増産を行い、生産量が増加して行く。
生産量には上限が存在する。油田の採掘可能エリアは円の形になっており、油田は限定された面積を有している。採掘エリアを被せてしまえば、トータルで採掘できる原油の量は減ってしまう。
よってある一定数よりも生産量が増えることはない。

2.中期
この時期は生産量が上限に達し、生産量が横ばいになる。

3.終了期
この時期は二つの理由により生産量が低下してゆく
1. 油田の圧力が低下
2. 中期において圧力低下を懸念して水を注入した為にガスが発生し、生産した原油の中にそれが混入し、1バレル採取したと思ってもガスを抜いてみると原油はその半分しかないといった様な状況になる。
(ちなみにここで水を注入しなければ1による生産量の低下がより顕著になる)


この時の生産量の低下は以下の二つの仮定から非線形的な物が想定される。
仮定1)生産量は油田の圧力に比例する。K1はパラメーター。
k1.JPG

仮定2)圧力は時間が経つにつれて減少する。また、その減少は生産量に比例する。
k2.JPG

qを時間tで微分する。
kf.JPG


よって生産量は一定の比率kで減少する。
もしkが10%で生産量が100であれば
100
90
81
72.9



と減って行きその減少は非線形の形となります。

まぁ問題はこのモデルが現実と整合しているのか?という事。
optimal depletion.JPG
real deple<strong></strong>tion.JPG

んーどうでしょう?当たらずとも遠からず・・・ってところでしょうか?
幾つかのケースにおいてはほぼモデル通りといえますが、Ekofisk(ノルウェーの油田)なんかではちょっと違うパターンが見られる感じです。


・閉鎖問題
生産量が低下すると、油田の収入も減少して行き、結果としてある一時点に置いて売り上げよりも費用が高くなる。この時点で石油会社は油田の閉鎖を考慮に入れます。

なぜ“決定”せずにただ“考慮”するだけなのか?それには二つの理由があって

1.閉鎖にはコストが掛かる為。
将来におけるコストは利子率で割り引くことが可能な為に、閉鎖コストを今支払うよりも、生産を続けて後でコストを支払う方が安く上がる可能性がある。
(イメージとしてはコストを今支払わずに銀行に預ければ利子分だけ費用も減るという感じ)

b>be^-rt

この線で行くと、閉鎖コストが高い環境にある油田においてはその生産はより長く続く事になる。


2. 原油価格は一定ではなく変動しているため。
もし将来において価格の上昇を望めるのであれば、将来の生産で利益を得ることができる。よって閉鎖を延期して生産を継続する事に合理性が発生する。

これらの理由により、油田の継続期間はモデル推定よりも長いものとなる。


・埋蔵量の増加
多くの油田において、地質学的な再調査と技術進歩による埋蔵量の増加が見られる。
生産前に埋蔵量を推測するのは難しい(=精度を上げようとすると高い)。そして、生産開始時の技術よりも高い技術は調査においても発見においても埋蔵量の増加に貢献する。

Ekofiskはこの理由によって埋蔵量と生産が増加した典型的な例で、
1983年に想定された予想増加埋蔵量は192 million Sm^2だったが、2011年現在では549 million Sm^3となっている。


この事実の素晴らしい点は、ほぼすべてのプロジェクトにおいて石油は思ったよりも多く生産されるという事だと思う。モデルの説明が大きく外れてしまうことは確かに学問としては憂慮すべきことかも知れない。
けれども、実際の埋蔵量が必ず予想値の上を行くのであれば、実務上の問題は何も無い。

むしろここから推測するに、僕らは僕らが思っている異常に石油を持っているんじゃないだろうか?
多くの油田開発は推測の時点で黒字でなければ生産がされない筈だ。しかしながらその推測の多くは実際の生産可能量よりも下の推測を出している。で、あれば。この予測の下方バイアスによって開発されていない油田はまだまだ多く存在しているのではないだろうか?
若しくは不確実性を考慮に入れたモデルを組んで多数のそういった油田に投資をすれば、そのようなストリッパーウェル(コストと売上ががギリギリの油田のこと)においても安定して利益を上げられるんじゃないだろうか?


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