突破口。 [研究]

自分で行う研究とは基本的にアイデアを生み出してはそれを自分で潰すという作業の繰り返しだ。

自分がそこに存在すると思う事象を探す為に一人で仮説の乱立する森を歩き、データの砂漠をさまう。

そしてそれは突然やって来た。


いつもの様に天才ドイツ人ニルスとカフェで研究をしていた。

互いにトピックは別な物の、計量経済学で研究をしているので相談しやすいという理由で良く何処かのカフェに陣取って勉強したり研究したりする。

ニルスは風力発電への投資が地域経済へ与える影響を研究してる。

彼の今使っているモデルがあまり見込みが無さそうなのでパネルデータへ移行してはどうか?という話をしていた所で、恐らく地域経済成長モデルはAR(1)(つまり、前年の経済規模が今年の成長規模にも影響がある)になるだろうと思いついた。

その話をしている時に頭の中では自分のトピックについて考えていた。自分のケースでは同じ様な構造が存在しないのだろうか?
この時点では答えははっきりしていなかった。ただ、3年前の値段が2年前の投入量に影響して、投入量が今年の供給量を決定し、供給量によって価格が左右されるのであれば、3年前の値段は今年の値段への影響を持つ事になる。

そしてこのケースはDynamic Panel Dataと言えるんじゃないだろうか?
ニルスとの話が一段落してたので、話しながら考えていた事をまとまらないままにニルスに喋ってみた。
そして考えが詰まったので話を途中で止めて再び考え始めた。そしてニルスがトイレへと行く。

そしてふと思った。
俺の扱っている市場に同時性(simultaneity)ははたしてあるのだろうか?
普通の商品の場合、供給と需要は同時に決定される。つまり、相互に影響し合う訳だ。

しかしサーモンの場合、一定期間に置ける供給量は2年前にどのくらい稚魚を入れたかで決定される。
つまり、供給は需要とは同時には決定されないのだ。
供給は過去の需要によって決定する。

この時点ではまだ考えが曖昧だった。
そしてここで思いつく。
あぁ短期的な供給決定と長期的な供給決定があるのか。と。

長期的な供給決定は過去の需要によって行われる。そしてここには同時性は存在しない。
短期的な供給決定は現在の需要(=価格)によって行われる。そしてここには同時性が存在する。

そしてニルスがトイレから帰って来てこう言った。
「考えてたんだけど。多分供給決定には短期と長期があるんじゃないかな?」

そこから30分くらいはモデルを作り直したり色々確認したりとしていた。
そしてまた一つ壁に当たった。

短期的な供給決定には同時性が存在する。
という事はendogeneity problemを解決する為にIV methodを使わなくては行けない。
よって、短期供給には影響するけれども、価格には影響しないデータを探し当てなくては行けない。
正直望み薄だと思った。なぜなら大体のデータは年間データで、あまり細かい事はデータとして上がってこないからだ。
過去にノルウェーの漁業組合のデータベースに保存されている変数の一覧を研究ノートに作っていたので、それを眺めていた。

養殖者はある程度の時期が経ったらサーモンを収穫したいと考えている。なぜなら成長速度は遅くなって行くのに餌代がかさんで行くからだ。だったらさっさと収穫して新しく稚魚を入れた方が儲かる。
じゃぁもし年明けに大量に去年のサーモンが余っていたらどうするだろうか?もちろん売りに走るだろう。つまり、去年のあまりは今年の供給量に関係がある訳だ。そして、余剰サーモンの変動が与える価格への影響は当然少ない。
一つあった疑問は、
もし去年の価格決定が今年の価格決定に影響があるとして、去年の価格が去年の過剰サーモンの量と相関しているならば、去年の余りのサーモンはIVとして有効ではなくなる。
という物だった。

それを確かめる為に単回帰で相関を調べた所、去年の価格と去年の過剰サーモンに相関は無かった。




そして夜家に帰り、短期決定モデルを推定してみた所、全てが上手くいった。
1%の供給増に対して、価格は0.13%の低下を示した。
そして、長期決定モデルでは、1%の去年の価格上昇に対し0.18%の供給増を見せた。

つまり供給曲線のカーブが需要曲線のカーブよりも強い。これはまぎれも無く探し求めていたcob-webモデルの条件であり、cob-webモデルは周期性を説明する。

その後は興奮して寝れなかった。

眠くなるまでゲームと映画で時間をつぶし、
朝起きると同時にもう一度分析してみた。

幾らかの仮定をクリアしないといけない事に気がついたけれども、基本的に間違いは無さそうだ。
そのあと久々に買ったパンにスモークサーモンとチーズを乗っけてオーブンで焼き、分析結果を見ながらコーヒーと共に食べた。はじめてノルウェーにようこそと誰かに言われた気がした。

今日からイースター休暇なので、教授と結果に付いて相談する事は出来ない。
けど、イースターが終わったら結果を教授に見せて、お墨付きが貰えたらこれを論文にして卒業研究はおしまいになる。
実はもうちょっとやりたい事があるのだけれども、ちゃんとデータが手に入るかが解らないのでひとまずは置いておこうかと。

暫くはこの結果が砂上の楼閣でない事をチェックする為に教科書とにらめっこになりそうです。
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サーモンファームの蜘蛛 [研究]

えー3ヶ月くらい謎だった事がようやく解りまして、卒論の方が一歩進みました。

今回はcob-webモデルについて書きます。

この回
この回を読んでいる事を前提に話を進めます。

さて、9月の終わりからはや4ヶ月が経ちました。

10月入ってから年始まではひたすらにアシスタントやっていたので卒論は全く進まず、
年末年始に日本へ帰っていた間に考えて得たアイデアを元に今現在進めています。

でですね、このアイデアというのが大当たりしまして、一気に先が見えてきました。

現状はこんな感じです。

目標:salmon farmingの周期性を確認してそれをモデルで説明する。そしてそれが利益の周期と関係がある事を確認する。

現状;
1.サーモンの生産量に周期性がある事をほぼ確認(これは実は他の経済学者が見つけられなかった事。うへへ)

2.利益率にも周期性がある事を確認。

3,それらを市場の周期性を説明するモデル、cobweb modelで説明する。(今ここ)

1はちょっとまだ秘密で2は周知の事実となっているので、(twitterとかでつぶやいてるけどあれはクローズだしw)3について書きます。


まずは単純な需要曲線と供給曲線を想定します。
需要はある値から価格上昇によって低くなった購買量分だけ差し引いた物になります。
供給量は逆にある値に予想価格(P*)の上昇によって高くなった生産量分だけ足した物に誤差項εを足した物になります。
そして、予想価格は去年の価格と同じ値になると想定します。P_t-1 = P*

需要量と供給量は市場で均衡するので、それらは同量になります。S=D

cobweb1.png

もし誤差項εが常にゼロで、価格が常に一定ならば、long-termでの価格と供給量が求まります。

しかし、実際にはそれらはゼロでも一定でもありません。
よってSt=Dt の式からPtを求めることができます。(最後の式)


このPtの式を周期性の式に直します。
時系列分析のdifferential equationを解きます。
参考までに。


Applied Econometric Times Series (Wiley Series in Probability and Statistics)

Applied Econometric Times Series (Wiley Series in Probability and Statistics)

  • 作者: Walter Enders
  • 出版社/メーカー: Wiley
  • 発売日: 2009/11/02
  • メディア: ハードカバー




4steps
cobweb2.png

この4ステップは式の解き方なので、深い事考えない様にしましょう。(解の公式みたいな物です)

この4つ目で得た式が価格の周期性を表す式です。

ここでεが0で初期価格が長期の価格よりも低い値だと仮定します。

cobweb3.png


すると、a,b,β,γの値にもよるんですが、条件を揃えると価格に周期性が発生している事が解ります。

t=0では長期価格より低く、t=1では高くなり、t=2ではまた低くなり...それが続いて行く。

エクセルで適当な値を入れてsimulateしてみるとこんな感じになりました。

cycle test hane.png

ここで得たPtをStの式に代入すれば、供給の周期性が解ります。

と、言う感じの事を今やってます。



やってる本人はこれで供給ラグがちゃんと説明つくのかちょっと不安です。

なんかもう一歩踏み込んだ事しないとちゃんと説明出来るのかが微妙な気がする。
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just 1 message is enough [研究]

日本からノルウェーに戻る当日の朝、ソファーで体を起こして親父が会社へ行く準備をしているのを眺めていたらoutlookがメールを受信を知らせる音がした。

メールを開けてみると差出人はグンナー教授。

去年終わったと思っていたアシスタントの仕事に追加が入り、ベルゲンに戻り次第研究室へ出頭しなさいとのお達しだった。

このメールはとても大きな意味を持っていた。
1, この2ヶ月の働きに関してグンナー教授は満足している。
2. 長期的なプランでこの研究に取り組む用意がある。

つまるところ、この研究に長期的に携われそうなのだ。

そして恐らくPhDにEnvironmental Corrective Taxのトピックで出願すれば普通に入れるという事も意味している。。。気がしている。

この2ヶ月間やっていた研究は、「どーすれば新車の平均km当たりCO2排出量を政府の指定した目標まで下げる事が出来るのか?」という物だった。

もし自然科学者に問えば彼らはきっと「より燃費の良いエンジンを開発すればよい」というだろう。

しかし、経済学者は価格の調整、言い換えれば購買者のインセンティブを利用してこの目標を達成しようと考える。
更にインセンティブを操作する際に社会費用が最も少なくなる物を選択したいとも考えている。

そこで出てくるツールはCorrective Taxというもの。
このケースで言えば二酸化炭素排出量に税金をかける。100g/kmの車は90g/kmの車よりも10g分だけ高い税金を支払わなければならない。と言った感じのもの。

つまり、排出が多い車がより高くなれば、少ない車へと消費が移って行くので平均の排出量は低下する。

平均が下がるとき、平均を計算するメカニズムの中では2つの事が起っている。
1.同じセグメント内で軽い物を買う様になる。例えばSUVで排出量が多いモデルを買うつもりだったけど税金が高いからSUVでも軽いのを買う事にする。
2.重いセグメントから軽いセグメントへと移り変わる。SUVが税金で高くなってしまったから、殆ど税金の掛からない軽自動車を買う。


ノルウェー政府は2008年から車の二酸化炭素排出に税金を掛けており、その税率は毎年上昇している。
そしてノルウェーの新車二酸化炭素排出量もまた年々下降している。

もし十分なデータを持っていればここではじめて統計分析が力を発揮する。

排出量に関係ありそうなデータに税率を入れて回帰分析してみれば良い。

そうすれば税率をどの程度上げれば目標を達成出来るかが解る。

しかし、現実では車の売り上げデータが2008年と2012年分しか手に入れる事は出来なかった。
実は新車を買うと登録するシステムがあるのだが、それに車の購入価格が含まれていなかった。結果4万種類もある車の価格を調べてマッチングさせなくてはならず、他の年は間に合わなかったのだ。

結局ちょっと別の手法を使ってそれぞれのセグメントの税金に対する売り上げ弾力性を調べた。(この部分はもうちょっと秘密。)



さて、読んで解る通り魚なんか全く関係ない(笑

そして今の所僕はこの研究も魚の研究も手放す気がない。

ので、こういった税金の影響の計算を魚も含むトピックでやってしまえば良いよね。という結論に至った訳です。

という事で、多分PhDはEnvironmental Corrective Tax in Fishery and Aquacultureとかって感じになるんじゃないですかね?

お腹減ったからスーパー行っておかし買ってこよう。
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見える背中。 [研究]

最近少しずつ、教授達の背中が見える様になって来た。

1年前に修士を始めた時は誰がどんな研究をどのような手法でしているか?というのは中々解らなかった。

けれども今ならもっと色々な事が解る。

何でモデルが必要なのか?(事象を数学的に記述する事で客観的な分析を可能にする)

何で統計が必要なのか?(モデルと言う抽象的な物が、データと言う事実と繋がっている事を示すため。言い換えればモデルが現実を説明しうるという事を示すため。)

それらが上手く作用しない時はどうすれば良いのか?(モデルを弄ってみたり、データ分析の手法の問題を解決したりする。若しくは違う視点でモデルを作り直してみたりする)

そしてそれらを使いこなせるとき、分野という枠組みは意味を持たないというのもこの1年で解った。


モデルと統計分析の難しさの程度に違いはあれど、基本的には(うんこな研究を除けば)全てこのプロセスで成り立っている。

そして一番の難所がモデルを作る所にあるのも解った。

でもモデルを作るのはつまらない作業ではない。

レゴで何かを組み立てるのと同じ楽しみがあると思う。

自分が勉強した事によって手に入れた数学の知識がブロックとなって、それらを組み合わせる事によって現実に近似したモデルを組む。

1週間程前から教授と車の需要についてのモデルを作り始め、今日そのひな形みたいな物が出来た。

別に目新しいモデルじゃないし、モデルそのものには特に価値はない。そのモデルを分析して変数に付いて解いた物にちょっとした意味がある。

それを使ってどんなデータを分析するべきなのか?とどんな結果が予想出来るか?を明らかにした。

後はデータを待って、その結果通りに分析をしてみるだけだ。

もしその結果が予想した物でなければ、またモデルを考え直す事になると思う。



多分俺はこのモデルを自分一人で作れと言われても作れないと思う。

でも、そう遠く無い未来に置いては作れると確信した。

あと、これで飯を食って行ける様になればとても幸せだろうなって事も再確認した。

この1年間はひたすら学校で生き残る事に必死だった。
けど、気がついてみれば生き残れているし、自分の欲しい物も手に入れる事が出来ている。

今年は堂々と日本へ帰れそうです。
帰ったら遊んで下さい。
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昨日のお話とまぁ色々と、電車の中で考えて決めた事。 [研究]

無事全ての行程を終了して、昨日電車でベルゲンまで帰ってきました。

電車で帰るのかよwという突っ込みを教授から貰ったのだけれども、電車です。

いや、飛行機のセキュリティーチェックとかすごい嫌いなんですよw



朝6時くらいに悪夢で起床。
というか、多分自分の怒声で起床。産まれて始めてそんな事しました。

そのままベットの中で1時間くらい考え事して7時にシャワー。
CNNがやってたので、アメリカの選挙の結果を見つつ、半から朝食。

ビュッフェ形式の朝食で食べ過ぎる人なので、当然食べる。
スモークサーモン美味かったなぁ。

で、8時55分に教授と合流してそのままOFVへと向かう。
ちなみにここ。
http://ofvas.no/

その間に更に朝食を渡される。お腹いっぱいっす。

車と交通に関する正しい情報を促進するという団体で、国からの研究とかデータの収集とかを委託されるらしい。

今までのメールではそんなに協力的な感じではなく、データも渋られているっぽかった。

が、ここでグンナー教授が演説っぽいプレゼンを始めるw

あちらさんは車専門なので、取り敢えず地球温暖化と車の話から入って、現行のノルウェー政府が電気自動車を推している状況なんかについて話して行く。

そしてさりげなく税金なんかの話をしながら準備を整えて、今後どんな政策があり得るのかというお話をする。(相手が興味あったから)

で、データをくれたらこういう研究が出来るよというお話を始める。
内容自体は今やってる事と、先日電車の中で話した事と飛行機の中でニヤニヤした事。

今やってる事は
1. 車の性能から税金を計算する事
2. それらの車の売り上げを計算する事
の二つを必要としている。

で、この辺を説明して、今のプロジェクトを超えて研究出来る事があるという示唆をする。
(それはここではないしょ。)
この説明を終えた瞬間、相手は目を輝かせて。是非やりましょうと言い始める。

え、なんで?w

なんかもう態度の変わり様が面白かった。
教授が条件さえ整ってしまえばPhD2,3人動員すれば研究出来ると言ったので、
このテーマで研究するのならPhDに補助金出すとまで言い始める始末w

長期的な協力体制が整った所で(その長期に俺が含まれているかどうかは解らないのだけれどもw)、
目下のプロジェクトをどーするかを考え始める。

いやね、

参ったよ。

まぁパネルデータを扱う事にはなるでしょうねと思ってたのね。
で、データ整理しないといけないけど、ノルウェーの車の種類って3000くらいでしょ?とか思ってたのね。
でもね、くるまって同じモデルでも別々のオプションで販売されるんだよね。
で、売り上げデータもそれぞれ別々だし、性能も別々なのね。
だからさ、クロスセクションの次元が15,000くらいあるんだって。
15,000と15,000のデータセットをコネクションしようって思ったらどーなるんだろうね?

登録番号とかあるんじゃねーの?それであわせれば良いじゃんと考えた鋭いそこのあなた。
あるんだけれども車のモデルごとで、オプションごとにはなってないからそれ出来ないのよ。

と言う事で何らかの簡略化の措置がとられる事に。
おそらく、平均を取るんじゃないかなという話になりました。

よし、もうどうにでもなれw
多分今の時点でこの教授のおかげでPhDに行ける可能性はかなり高いから、試験は知らんw
取り敢えずこっちで褒められる様に頑張る。


データの話が終わった後、都市経済学の話になって、交通と都市の話を結構した。
やっぱ経済学の良い所は何にでも首を突っ込めてそれっぽい話を出来る所だよなと思った。

その後はオスロのオタク趣味な店とか服屋を回ったけれども特に欲しい物が見つからずそのまま電車。
服はサイズあわせるのが難しいので気に入ったものがあっても買えないケースが多い。
俺がもう少し痩せれば良いのだけれども。。。
あと欲しい鞄があったのだけれども、部屋と学校の往復程度でしか使わない事を考えると思い切れなかった。



僕が今使っているiPhone3Gをかったのは恐らく2009年の3月くらいで、それから事あるごとにメモ帳に日記を書き込んでいたのね。
で、そいつらを電車の中暇だったので読み返してたんですよ。

今読み返してみるとすごい恥ずかしい物ばかりだったのだけれども、
こんな事が出来たら良いな!って思って書いていた事が結構出来てるのに驚いた。

そして実は3年も前にサーモンの事を考えていた事が解って驚いた。

今も別の場所に色々書いたりしている訳だけれども、3年くらい後に見直してまた驚けると良いな。
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始めての [研究]

始めて出張みたいな事をしました。

今日はリサーチアシスタントの為のミーティングでオスロに来ています。

基本的には教授のおまけです。
とりあえずどんな一日だったか書いておこうかと。



朝5時くらいに起きてシャワー浴びて朝ご飯食べて、

6時にベルゲン市街から空港バスに乗って、

6時半過ぎに飛行機にチェックイン。

コーヒーを飲みながら資料を眺めて、グンナー教授と合流。
因にグンナー教授のプロフィール。
http://www.nhh.no/en/research---faculty/department-of-finance-and-management-science/for/cv/eskeland--gunnar-s.aspx

コーヒーとパンを食べながら、会議への準備を始める。

基本的には教授がアイデアをぽんぽん発言していって、俺が聞いて、たまに今までに読んだ資料の中と食い違っている点なんかについて詳しく聞き直す。

そしてここで理解する。この人今日の会議の相手から送られて来た資料全く読んでねぇwww

この辺で話した事は、

何でCO2の排出量に対する税金がconvexなんだろうね?とか、
CO2排出量に対する税金の大きさって他の税金に対してどのくらい?とか、(ノルウェーではどの車でも払う税金の額の3割程がCO2。)
電気自動車の優遇政策についてとか。

ボーディングが始まったので列に並びながら世間話。
卒論の担当教授の話とか、アメリカの選挙の話とか、卒論のトピックの話とか。
実は卒論のトピックがこの教授の修士論文の内容と非常に似ている事が判明して盛り上がる。

俺の論文は、ノルウェーに置けるサーモンの養殖に周期性があるかどうか?
値段が高いと生産を増やして、2年後に出荷増を受けて値段が低下、それを受けて生産を減らして、2年後に出荷減を受けて値段が増加、それを受けて。。。
というお話。

グンナー教授は海運会社の投資に周期性があるかどうか?について研究してたらしく、サイクルが20年周期だった事以外は大体同じだそうな。

この話から、周期性が他の産業に適応出来るかを考え始める。
多分航空会社はあるんじゃないかな?と。あと鉄道。
っていうか労働市場とかもそうなんじゃね?とか色々。

飛行機が離陸した辺りでなんかアイデアが降って来たらしく、CO2の話に戻る。
現状ノルウェーでは重量と馬力とCO2に税金がかかってるんだけれども、それらは全て相関している。そりゃそうだ、馬力が高ければ燃費が悪くなるし、重量があればより多くのエネルギーが必要になって燃費が悪くなる。
じゃぁ結局の所CO2排出の税金一本にまとめられるんじゃないか?と言うのが降って来たアイデア。
面白いアイデアなので取り敢えずサポートしてみる。一方で教授は駄目そうな理由を探してみる。
面白い結果が幾らか見つかったのだけれどもここでは内緒。この辺で2人でニヤニヤしてた。


そしてサーモンファームの話へ戻ってくる。
卒論の続きの研究とか考えているのか?と聞かれたので、手持ちのアイデアを幾らか伝えてみる。
特に盛り上がったのはサーモンファームの周期性と環境問題の関連性とそのモデル化。(まぁ環境経済学の教授だしねw)
サーモンファームに置ける環境問題(養殖されたサーモンの脱走による生態系の破壊とかサーモンの病気とか。)の規模や起きる確率はサーモン密度(人口密度ねw)と相関がある。(はずw)
で、サーモンの養殖に周期性があれば、生産量を多くしている時には環境問題が起きやすくなる訳で、そしたらその辺に何かしらのトピックが落ちているでしょう。なんて話をした。
まぁそりゃトピックはあるだろうけど、問題となるのはそうした物をどんな政策をどうやって使って制限するか?になるから、その辺を準備しておきなさい。と釘を刺される。

はい、肝に銘じます。あとそのアイデアをPhDのリサーチプロポーサルに頂きますw

離陸して10分くらい経ってPCが使える様になったので互いにPCを弄り始める。
俺はツイッターでちょっとつぶやいた後にまた資料を確認する。

着陸前にPCを片付けてする事が無くなったのでまた話し始める。
良く授業でマルクスについて触れるので、ちょっとマルクス経済学について聞いたりした。
取り敢えずモデルとしてはそんなおかしく無い発想だけど所得分配の発想はちょっと。。。みたいな反応だった。

たぶん飛行機の中はそんな感じ。

で、9時半頃に電車乗って、その間はミーティングで会う人達の説明。
Transportøkonomisk institute(国土交通省みたいなもんかな?)って所の人2人と、コンサル会社の人2人。

その後はちょっと長期の話。もし今考えている政策を実行したら、生産者側はどんなリアクションをするんだろう?みたいな。
取り敢えず今は需要側の事しか考えていないのだけれども、当然生産者側にも影響があるはずで、それをどうやって推定するかとかも考えんとねと。
えーComparative staticsっすか。(sensitivity analysisともいいますね。多分)
実はあんまりあれ良くわかってナインですよねぇ。

とは言えないのでw



ですよね!やりましょう!とか適当な事言い始めるw(そして心の中で「俺の卒論の後に」とも小さく付け加えて。)

でも、もし望んでいるデータセットが手に入るのであれば、絶対に何か面白い研究が出来るはずなので、アイデアはキープしておきたいな。


後はTransportøkonomisk instituteに付くまで世間話。オスロの話とか日本の話とか。

10時過ぎに到着して早速ミーティングが始まる。
取り敢えずはTøiの2人が今手元にあるペーパーとかで重要な情報について説明し始める。(グンナー教授が読んでないからw)

で、恐ろしいなと思った事は。
そこで聞いた話から、少なくとも俺には穴がないと思えるアイデアを打ち出す事や議論が出来る事。
いや、こういうのを頭が良いって言うんだろうねw

うーん。あれできるかなぁ。うーん。
なんつーか理論がちゃんと頭に入ってて、普段から使われてないと無理だよね。

関係ないけど、ノルウェーが過去に行った増税の影響のグラフとかがとても面白かった。
駆け込み需要が見事にグラフに現れているのとか始めて見たw


あとは、2020年の色々な予想のグラフとかが会ったんだけれどもこの辺は内緒。

で、昼食。
昼食を選ぶ間にコンサル会社の2人のうちの1人と喋っていたのだけれども、海藻の養殖の話で盛り上がる。
違うプロジェクトで海藻の養殖をして、ジェット燃料をバイオフュールとして生産しようとしている話を聞く。
なんか面白そうな研究知ってる?と聞かれたけど、残念ながら。
やっぱアイデアが頭の端にあるのなら論文くらい読んでおいた方が良いのかもね。
ここでなんか面白い事言えたらなんか美味しいチャンスとか回って来てたのかも。

昼食をとりながらミーティングは続行。
この辺から集中力の低下を感じ始める。教授の喋りも切れが足りなくw
ただ、データの話とかが出て来たのでフォーカスを戻す。
どうやら車のスペックデータは思っていたのと違う形であるらしく、計量分析を可能にする形にするためには恐ろしい時間が掛かるっぽい。
と言う事で、なんか別の方法ないのかな?という流れに。
なんというか、自分の仕事が減るのは嬉しいのだけれども、給料貰ってるのにそれで良いのだろうか?といういかにも日本人的な発想を頭にあるのを認識しつつ、やっぱり仕事は少ない方が良いからそれを済みに追いやる。
まぁ全体を代表出来る様なサンプルを抽出するのが現実的かな?

コンサルの2人の飛行機の時間が迫っていたので、そっちの方を先に終わらせる。
その後場所を変えて、4人で人参を齧りながら続行。
50くらいのおっさん3人がバックスバニーみたいな持ち方で人参を持って、ぽりぽりしながら政策をどーするとか話しているのはとても滑稽w
そして必死にノートを取りながらぽりぽりしている俺も滑稽なんだろうねw

で、ミーティングは終了。

その後は解散して、俺は買い物。
でもなんか欲しい物がなかったので結局ホテルでブログを書いている始末。




明日は朝9時からセントラルステーションの正面にあるFLOだったかそんな感じの名前の所とミーティング。
データをくれる所なのだけれども、なんか渋っているらしく、取り敢えずどんな形のデータなのかとかを良く聞く。





いや、あのね。楽しかった。
多分人生一番レベルで楽しかった。
こんなにドキドキした事ないし。
こんなにわくわくした事ないし。
あとかつてこんなに経済学を駆使して会話した事は無かった。

大学入ってから理由は何であれずっと経済学と英語を勉強して来て、理由は何であれそれを止めずにいて、それを遂に全力で使う日が来たと言うのは非常に。。。なんだろ。上手い言葉が見つかんないです。

嬉しいし、楽しいし、誇らしいし、あと何か。


ちょっと前にノーベル経済学賞を取ったポールクルーグマンは、学部生の時に政策に関わる様なリサーチアシスタントをやって25歳の誕生日を迎える前に生涯を通じての研究テーマを見つけたそうな。

俺は今25になって、やっと同じ様なリサーチアシスタントのポジションを取ったばかり。
そしてまだ生涯を通じての研究テーマと呼べる様な物は見つかっていない。

うーん。PhD中には見つかると良いな。

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すすんだこと [研究]

とりあえず寝る前に何か書こうと言う事でブログを開いたのだけれども、特にないやw

えっとね、卒論やってます。

今日鮭の養殖の教科書をほぼ1冊読み終えて、どの変に的を絞って分析すれば良いのか解ってきました。

Profitability cycleが存在するであろうと言う事は教科書でも示唆されていたのだけれども、まだそれを統計分析で実証はされてないっぽいです。

論文を幾らか読んだところ、月単位のデータではAutoregressionが長いスパンでは取られていないみたいで、今月と先月の価格の相関が調べられてはいるものの、今月と去年の同じ月の相関と言った物はされてませんでした。

されてない理由は恐らく月間データでの分析が盛んでないというだけでしょう。とゆーかそうであってくれwでないと論文書き終えれないから。


教科書の中のProfitability cycleでは、効率の上昇から稚魚の数を上昇、2年後に出荷量が増えて、値段が下がり、稚魚の数が減少し、2年後に出荷量が減って、値段が上がって、稚魚が増える。というサイクルが説明されていた。
けど、実際データを見てみるとサイクルはもうちょっと長いスパンに思える(4年6年程度)
なので実際の所は、稚魚の数がある程度増えても2年後の値段はそんなに変わらずそのまま利益が増え、それによって更に稚魚を増やし、その2回目(若しくはこれをもう1回繰り返して3回目)の稚魚の増加の結果によって値崩れが発生するのではないのかな?と仮説を立ててます。

これを統計分析で見つけるのって結構しんどそう。
何でかというと、ある時点以降は相関の強弱(もしかしたら正負も)が変わってしまうから。
あと、鮭は必ず2年で出荷する訳ではなく、理由があれば早めに出荷する事もあるので、何年前の利益を相関に組み込むかを決定するのは結構難しい。

もうちょっと出荷時期の事をよく知った上でモデリングしないと、ゴミな結果しか得られないかな?

意外と生産サイドの論文を見つけられたのでその辺も読んでおかなくては。
あと、価格予想の論文なんかもあるのでそっちも見てみようかと。ただ、目を通した感じ需要側の変数からの予想が主体なので今行おうとしている研究には役に立たないかも。
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巡り巡ってまた巡る。 [研究]

1週間程前に今いる大学で一番数学使う教授の所へ行って論文のアドバイザーになってもらう許可を貰ってきました。(ついでに博士課程への推薦状の約束も)

トピックについて色々と考えていたのですが、その時に話して色々と腹を括って鮭の養殖関係にする事にしました。

具体的に言うと、
サーモンファーミングにおける生産量に周期性があるのか?
っていうトピックです。

ロジック自体はとても簡単で、
ある年に置いて生産性が一時的に上昇して利益が向上すると(例えば適度な水温の上昇とか)、サーモンファーマーにとっての期待利益が上昇するので多くの稚魚を生簀の中に投入することになる。

その結果1年半〜2年後に多くのサーモンが市場に出回ることになり、供給の増加による価格低下が発生する。
そして、価格低下による利益低下を受けて今度は稚魚の量を減らすことになり、それが1年半〜2年後の供給減による価格上昇を引き起こす事になる。

そしてそれによって利益が上昇して稚魚を増やして。。。。

というお話なんでございますよ。
シンプルなモデルで考えると上の様に永遠と周期し続ける訳なんだけれども、実際にはどうなんでしょうね?というのが論文で研究する部分です。

アプローチとしては、もう少し複雑なモデルを組んで(例えば餌の値段や収穫コストや収穫時期を考慮したり)、関係ありそうな変数を見つる事。時系列分析を利用して、2年前の利益と今の供給&値段に相関があるかを調べる事。の二つが考えられるので、それらを実行して行こうかと思います。

まぁ教授には「そんなに簡単な話ではないけれどもねはっはっはっは」と笑われたので気合いを入れて行こうかと。


今の所ぶち当たっているのがデータで、手に入らないんスよ。
サーモンの取引量とか値段は手に入ったのだけれども、月ごとの利益が手に入らない。昨日読んだ論文にMarine Harvestの月ごとの利益データが使われていたので、そのデータを貰えれば良いのだけれども果たしてどーなる?

ちなみにサーモン市場の分析では月ごとデータが使われる事は殆どなく、研究対象も需要側ばかりだったので(経済学が盛んな国が消費側ばかりだったのが理由っぽい)、多分この研究はまだ誰もやってないっぽいです。(少なくとも自分で調べた限りでは。)



で、論文を何本か読んでみた感想なんだけれども、普通の経済学で使われている分析手法がサーモン市場にそのまま使われている感じで、しかも今まで誰も分析してこなかったおかげで比較的簡単な分析手法だけでもまだまだやれそうな事がいっぱいあるのがいい感じでした。
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